歪み

その背中にそっと手を置く。

「…紅梨、そんなことないよ。
紅梨は十分頑張ったよ」

その後もしばらく紅梨は泣き続けた。
俺は何も出来ず隣に座ってた。


「俺さ、岩沢に告られたよ。
もちろん断ったけどさ」

「…っざまあみろ」

真っ赤な目でそう言って笑った紅梨は
懐かしい紅梨の笑い方だった。

「ありがとう拓。
うち、これでやっと前を向ける気がする」

「…うん」

「でも、最後に1つお願い。
うちのこと真柚には一切話さないで。
これ以上真柚に傷ついて欲しくない。
真柚のこと、任せたから。
大切にしないと許さないからね」

「…当たり前だよ」

< 271 / 274 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop