歪み

あたしが紅梨を傷付けた。
親友とか言って紅梨の事何にも知らなかった。

「真柚、何があったんだよ?」

好きなはずの拓にさえ素直になれなくて。
何も知らずにあたしを心配してくれる拓に
嬉しさより辛さばかり募る。
咄嗟に嘘を付いて誤魔化すあたし。
後悔と罪悪感ばかり重ねて歪んでいく。
拓の前でさえも笑えない。
“私、前から橘さんと話したかったんだ。
でもずっと紅梨がいるから。
紅梨ってさ、
橘さんから速水君取ろうとしてたんでしょ?”

今更になって知った現実。
噂が尾ひれを纏って舞って。
知らないうちに紅梨は
最低な奴に仕立て上げられていた。
どうして。
もう誰を何を恨めばいいかもわからない。
自分のせいだって認めるのが怖い。

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