歪み
「あたし…わからないよ。
ねえ好きって何なの?」
どうして全然話した事のない人なのに
本音が言えたんだろう。
花奈にさえ、言えなかったのに。
「どうして
私が橘さんのこと気になるのかわかる?」
返ってきたのは答えじゃなくて質問で。
見たことないくらい冷たい表情の吉岡さんが
あたしを見下ろしていた。
佐野有に見下ろされても怖くなかったのに…
今は何とも言えない恐怖があたしを襲う。
「あいつが…佐野有が
唯一興味を持ってたから。
聞いてるんでしょ、私があいつの元カノだって」
「…どういう意味?
興味を持ってたから何なの?」
「許せなかったの。佐野有が。
あいつ、私と付き合っても違う人を見てた」
「それがあたしだっていうの?」
“橘さんが泣いているとこ見たことある?”
いつか花奈が言ってたことを思い出した。
佐野有にとってあたしって一体何?