歪み
02
…!?
突然ぎゅっと吉岡さんがあたしを後ろから覆った。
「吉岡さん…痛い」
「渡さないから、橘さんは。
思い通りになんかさせない」
耳のすぐ後ろで吉岡さんの声がした。
訳が分らない。
そんなことして何のメリットが?
「関係ないだろ、橘さんは」
「嘘つき。
有がずっと見てたのは橘さんでしょ?」
どういうこのなの…?
顔を上げて佐野有を見る。
苦しそうだった。
どうして?どうしてそんな顔をするの?
あなたは…
本当にあたしが、好きなの?
「歪んでるんだよ、お前」
「歪んでたって構わない。
橘さんは…橘さんは有なんかに渡さない。
私と同じ想いなんて、させない」