光よ、生きて


君はまだ、空を見上げている。


駅前のロータリーを照らし出すオレンジ色の街灯が、駆けてくる中年の男性を映し出す。男性はバス停に停まったワンボックスカーの助手席に、慌ただしく飛び乗った。


ちょうどロータリーに入ってきた市バスが、ワンボックスカーの背後に迫る。ワンボックスカーは押し出されるように走り出す。


僕は、駅の方へと振り向いた。


改札口から、ぱらぱらと吐き出されてくる人。視線を上げると、高架になった駅のホームを電車が緩やかに走り出す。


僕たちは、改札口を臨むロータリーの花壇の前に立っていた。


改札口を出た人たちは僕たちに目もくれず、急ぎ足で通り過ぎていく。彼らは一様に硬い表情をして、停車したばかりのバスへと乗り込んでいく。


遅れて出てきた女子高生は、携帯電話を確認しながらロータリーを見回した。おそらく、さっきの中年の男性と同じように車でのお迎えだろう。


携帯電話で大きな声で話す若い女性は、迎えが来ていないことに苛立っている様子だ。


それぞれが帰るべき場所へと帰っていく。





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