光よ、生きて
発車を告げるバスのメロディが流れてくる。
君が振り向いた。
まだ目は潤んでいるけれど、目の端に光っていた雫はまだ留まったまま。
ほっとしたのは零れ落ちなかったことに対してではなく、君の表情が和らいでいるから。ポケットの中で握り締めていた手の力が抜けていく。
まっすぐに、君を見つめ返した。
「お腹空いたね、晩ご飯食べて帰ろう」
君は口元に緩やかな弧を描く。
「うん、私もお腹空いた。何食べる?」
何事もなかったと、僕に笑顔を見せてくれる。
ロータリーの真ん中に立つ時計塔はクリスマスカラーのイルミネーションを纏って、いつもよりも煌びやかで眩しい。
時刻はまもなく、午後9時になろうとしている。夕食を食べるには時間が遅いし店の選択肢は限られてくるけれど、何か君の好きなものを食べさせてあげたい。
君の気持ちが少しでも軽くなるように。
君が穏やかな気持ちで居られるように。
君が笑ってくれるように。