光よ、生きて


ほんの十分前、改札口を出てきた君の表情はとても硬かった。


一目見て、理由はわかった。
いい知らせは無かったのだと。


この駅は、僕たちの住む家の最寄り駅。改札口を出てすぐにある花壇の前は、いつも僕たちの待ち合わせ場所だ。


僕は仕事の帰り、君は仕事を早退して片道一時間掛かる病院へ行って帰ってきたところ。君は月に数回、病院に通っている。その帰りに必ず僕たちは、ここで待ち合わせて家に帰ることにしている。


だけど通い始めて半年、君の表情は硬くなるばかりだった。


どこが悪いというわけではない。見た目も普通だし、何もかもが健康そのものでしかないのだから。


深刻に考えなければ、気にしなければ、大した問題ではないのかもしれない。
それでも一応は一通りの検査をしたけれど、何ひとつ異常は見つからなかった。


問題があるとしたら、
『タイミングの問題だ』と先生は言ったそうだ。


そのタイミングがわからなくて、僕らは一年もの間、一喜一憂しながら模索している。



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