千恋☆ロマンス Ⅱ
「永遠は、されなくてもいーでしょ。誰よりも恰好いい玲君と誰よりも可愛い梓がいるんだから。」
「十分だな。」
梓の発言に、玲は苦笑いして言う。
まぁ、確かに。
『そーだね。私、幸せ者だ。』
こんな大切な人がいるんだから。
『梓、玲。』
「なーに?」
「ん?」
『だいすき。』
自然と笑みがこぼれる。
「「知ってる。」」
『ふっ……なんでそんな自信満々なの。』
「だってもう何十回も言われてるもん。」
少しだけ照れくさいけど、伝えなきゃ伝わらないから何回でも言うよ。
もう何十回か目の「だいすき」は、夏の太陽が沈むと同時に、お祭りで賑わう人の声にかき消されていった。
☆☆☆☆☆
「てゆーか、あの人達遅い。置いてこーよ、もう。」
お冠な梓。
そう、私達が公園にいるのは、待ち合わせしていたからで。
公園の時計を見たら7時45分を少し回った所。
待ち合わせは7時半だった。
『確かに遅いかも。15分はたったよね。』
事故とかじゃなきゃいいけど……。
と、考えていた時だった。
《大変だよ!大変大変!》
『ん……?誰だ?』
多分この独特の雰囲気からして、人じゃないだろうけど。
《私だよ、わ・た・し☆》
カタカタカタ、と勝手に動く下駄。
「あら、下駄が動いてるー。」
もうモノが動くには慣れっこの双子。
「それで、何だって?」
『えっと……』
《フランクフルト屋さん!》
『フランクフルト……屋さん?』
ますますカタカタと揺れ動く下駄。
《入口のフランクフルト屋さん……。とってもジューシーで美味しいんだよねー。》
『大変の内容それ?!』
突然のツッコミ、しかもはたから見たら一人でノリツッコミ。
若干怪しかっ……た?
《ああ、そうそう!そうじゃなくて……》
───────。
『助けに行かな「「ちょっと待て。」」』
「永遠、一人で行ったら死ぬよ?」
……え?
『し、死ぬ?!お祭りってそんなデンジャラスなものなの?!』
知らないよ?!そんなの!
「ああ、死ぬ。お祭りはな、女だけで行っちゃいけない。必ず男も連れていく事って法律で決まってる。」
法律?!
でも、梓を置いていくわけにはいかないし。
迷っていると、はぁ、と溜息が聞こえた。
「しょーがないなぁ、永遠、後でなんかおごって。」
『うん!』
「それで、どこ行くんだ?」
『フランクフルト屋さん!2人が……皐月とハルが死にかけてるって!』
カタカタ動く下駄に急かされるように私達はフランクフルト屋さんへ向かった。
☆☆☆☆☆
「「……ああ。」」
2人はフランクフルトの前にくるなりそう言った。
『何あの人混み……。』
そう、そこだけ信じられない位の人混み。
しかも女の子。