千恋☆ロマンス Ⅱ
「どうして此処に来てるかっていうと、志紀様の護衛。」
『じゃあ何で志紀が此処に?』
「それは志紀サマが「潤、黙った方が身のためだよ。」すみません。」
驚いた。
あの毒舌潤君、恐怖してるよ。
『志紀、何で此処に?……あ、明希の仕事邪魔したら怒るよ。今日は皆が楽しむ日なんだから、負のエネルギーを集めるのはやめよ?』
明希に負担がこれ以上かかったら過労できっと倒れちゃうし。
志紀はうーん、と少し考えて
「永遠子が望むなら。」
とにこっと笑う。
……なんなんだろう。
この人の一言に無駄な色気があるのは。
それに笑顔の威力も半端ないよね。
それはきっと、ずっと作り笑いばかり見てきたからかもしれないけど。
……そもそもどうしたんだろう。
桜さんの一件で……嫌われるのならわかるけどさ、なんていうか……優しいって言うか……。
あ、新手の罠か嫌がらせか。
「永遠子、浴衣……着替えれば?……あ、そっか、脱がせてあげよっか?」
ポン、と思いついたように手を叩く。
爽やかな表情とは裏腹な事言ってますよ、おにーさん。
ていうかね、
『……やっぱり嫌がらせか!』
ほんの少し、周りの人に迷惑にならない程度の反撃をしよう。
ちょっとフランクフルト屋さんから串を拝借して志紀をちょっと刺そう。
そう思って串に語りかける。
《ごめんね、カミウチちゃん。黒の王が怖くて無理よ。》
「だってさ。残念、俺の方が強いね。だから無理だよ。」
『まだまだ発展途上だもん。勝つもん。』
ふーんだ。
……あれ、何で静か?
無言はやめてよ。
志紀はじっと私を見つめた。
それはもうじっ……と。
「ね、美鞠。」
「はい、何ですか。」
「あれ、同性からみてどう?」
「大分あざといですけど、天然な所が末恐ろしいかと。」
「うん、うっかり俺もきゅんときたよ。どうしよう、嫌がらせとか凄くしがいがあるよね。」
なんの話だよ!!
突然ざわざわ、と周りが騒がしくなった。
「ねぇ……あの人達やばくない?」
「めっちゃイケメン……。」
「でも女連れじゃん。」
「一人は子供だし、妹かもよ?」
いや、うん。それはそうなるよね。
はっ、そうだ!
女の子達が皆志紀達の方に行けばいいんじゃない?
そしたらハルと皐月を救出できて、志紀達を撒けて一石二鳥!!
……そういえば、梓と玲は何処へいったんだろ。
さっきまでいたところにはいない。
キョロキョロと周りを見渡せば、いました。
涼しい顔で林檎飴を近くのベンチで食べてるよ!!
ちょっとくらい助けてくれてもいいでしょ!もう!
私も早く祭を堪能したいのよ!
でも、私の祈りは通じたみたいだ。
「ねぇ、じょー……あそこにいるのってまさかの志紀……?」
「は?!」
女の子達のざわつきに気がついたみたい。
いままで女の子達の対応に追われてか、こっちに全く気がつかなかったけど。
一度気がつけば二人は身長高いから、こっちの様子なんて余裕で見える。
「敵の親玉がこんなにしょっちゅう現れるなよ!」
『あ、皐月も同じ事言ってるし。』
本当そうだよね。
「ちょっとごめんね。」
女の子達を掻き分けてこっちに雇用とするけど、なかなか近づけない二人
「簡単には女達から逃げられないよ。少し女達の心に術を潤に掛けさせておいたから。」
ふふふ、と悪い顔で志紀は笑う。
うん、どうりで随分と積極的な女の子達だったよ。
「ちょ、春輝!お前呪術師なら気がつけよ!」
「ごめーん。でもね、だーいじょーぶ。」
「“この者達に掛かる呪術よ、全て消え去れ。”……じゃあ、ごめんね、どけてね?」
さっきまでが嘘のように女の子達がすっと道を作る。
「「で、何しに来たよ、黒羽屋。」」
おお、息ピッタリ。
本当は仲いいんじゃないかな、この二人……。
「なんだ、潤、弱いんだね。」
「勘弁してください。」