千恋☆ロマンス Ⅱ
東条が私の手から向日葵を奪う。
それとほぼ同時だった。
パンッという音が聞こえて向日葵が消えたのは。
『え、皐月が消したの……?』
「違うよ、こんな奴に消せると思うの?」
この声……!!
『「「志紀!」」』
そう、いつの間にか後ろに現れたのは志紀。
「2人とも、適当に顔隠せ。」
東条が梓と玲に言った。
「警戒してるの?東条皐月。」
定番の笑顔。
ついでにまたまた定番紅葉模様の着物を着ている志紀。
超余裕そう。
「それはもう。」
悪意むき出しに言う皐月を嘲るかのように言う。
「馬鹿にしないでくれ。俺の大切な永遠子の幼馴染みに手を出すとでも?」
『は……?』
さらっと問題発言よ?!
何か聞こえたよ?!
「とわっちゃんをいつまでも桜と重ねてた奴のセリフじゃないよねー。」
「それ、遠まわしに俺にも言ってるよな。」
そうだ、それだよ。
『また志紀は桜と私を重ねてるんでしょ?』
だからそんなこと言うんだ、と自分に言い聞かせる。
「もう桜には失恋済みだよ。大体髪を切ってからは、桜には見えない。」
でも、返ってきたのはそれを打ち消す言葉。
「永遠子が大切なんだ。すごく、すごくね。」
優しく笑う志紀。
耳まで真っ赤になるのを感じる。
「それで、志紀はなんでここにいるわけ?いつからいたの?」
「ああ、向日葵に仕掛けてたんだ。どうせ俺からって分かるだろうから、男が触ったら俺の意識が現れるようにね。」
なんていう技術の無駄遣い!