マリア様!
え?綺麗?当たり前でしょ。
「マリア様…っ!」
みんなは、私をそう呼ぶ。
別に私が呼んでって頼んでいる訳でも無いのに、みんな私を崇めて、羨むような視線を向ける。
篠宮マリア。
お父さんも、お母さんも。それどころか家族全員が不細工な一家に生まれた、唯一の美女。それが、私。
学校のみんなだけじゃない、家族すらも私のことを可愛がって、甘やかして———気付いたら、私の性格は我儘になってしまった。
「喉乾いた〜」
パタパタと手で顔を仰げば、パッと立ち上がるクラスメイト。たった今自分の為に買ってきた飲み物を、惜しみもなく私に差し出す。
「ありがとう。」
感謝?してないけど。
だって私、美人だし。
見物料にしては妥当じゃない?
なんて、思っている私が居て。
顔も美しい、運動神経も、勉強だって出来るけれど———
どうやら性格までは、マリア様のような天使にはならなかったみたいだ。
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