マリア様!
 * * *



「ちょっと、いい加減にしなさいよ!」

先ほどの教室から少し離れたところにある、人気のない校舎裏。

奴はそこまで私を連れてくると、やっとのこと腕を開放してくれた。



「こんなとこまで連れてきて、一体どういうつもり?」

掴まれて赤くなった腕をさすりながら、奴を睨んでそう言う。

おかげで授業も無断欠席になっちゃったし。

ほんと、最悪。



「どうするって、惚れさせるに決まってんだろ」

「惚れさせるって、あなた馬鹿?授業休んでまですることじゃないでしょ、それ」

「一度いったことは曲げねぇ主義なの、俺」

「いや、意味わかんないから。とりあえず、私は教室に戻りますからね」



これ以上こいつと話してても、らちがあかない。

そう思い、来た道を戻ろうと体の向きを変える。

っが…



「ほんと、ムカつく女だなお前は」

そんな、奴の呆れたように呟かれた言葉が耳に届いたかと思うと

「きゃっ…!」






急に、視界が反転した。



「えっ、ちょ…え?」

背中には、壁。

顔の横には、奴の腕。

両足の間には、奴の太もも。

これって、まさか…



「ちょっ、離れて…」

「やだ」

巷で噂の、壁ドンとかいうやつじゃないですか…?
< 20 / 32 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop