エデンの林檎


室内にキレイな余韻を残して曲が終わった。


私はいつものように先生に拍手を贈る。


「今日も素晴らしい演奏をありがとうございました。


今日のは何ていう曲ですか??」


「今日のは…


ドビュッシーの『月の光』だよ。


今日は月がキレイだったからこの曲にしてみた。」


「私、ショパンも好きですけど、


ドビュッシーの『月の光』も好きになりました。」


「そっか。


それは良かった。


あ…もう、9時30分か…。」


先生は時計を見ると、そう言った。


「私、もう帰りますね。」


私が部屋のドアノブに手をかけた時、


先生の手が私の手の上に重なった。


まるでー…


まるで、私を制するようにー…


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