恋人を振り向かせる方法


「敦哉さん?」

心臓が痛いくらいに鼓動が速くなる。
何せ真っ暗なのだから、どこからが部屋なのか、どんな雰囲気なのかが全く分からない。
抱きしめられている腕にそっと触れた瞬間、吐息をかけられながら耳にキスをされたのだった。
耳たぶを優しく唇で挟まれ、そして舌が触れたと思った瞬間に思わず甘い声が漏れた。
まさか、このままここでセックスされるのか。
行為自体は嫌ではない。
だけど、ここは玄関だ。
いくら何でも抵抗がある。

「敦哉さん、せめてベッドで•••」

失いかける理性を保ちながら口にすると、敦哉さんは耳元でゆっくりと応えたのだった。

「ベッドでなら、していいんだ?」

「えっ?」

その時、恥ずかしさが一気に込み上げてきて我に返る。
もしかして、意識していたのは私だけなのか。
そもそも敦哉さんは、そんな気など無かったのかもしれないのに。
それなのに、勝手に意識してベッドがらいいなどと、恥ずかしさで帰りたいくらいだった。

「私•••、やっぱり帰る」

とにかく逃げてしまいたい。
そんな一心で口にすると、突然抱きかかえられたのだった。
顔は暗くて見えない。
だけど、声で敦哉さんが笑顔なのが分かった。

「何で?しようよ、セックス」

そして抱きかかえられたまま、ベッドへと降ろされたのだった。
微かに匂う敦哉さんの香りに、完全に取り戻したはずの理性は、瞬く間に飛んでいってしまった。
唇が重なり舌を絡ませ合いながら、敦哉さんはベッドの脇にあったらしい小さなスタンドの明かりをつけたのだった。
オレンジ色の光が、優しくベッドを照らす。
しばらくキスを続けた後、小さな笑みを浮かべた敦哉さんが私を見下ろした。
そして慣れた手つきで服を脱がせる。
キスをしながら、胸に触れながら、少しずつ脱がされていく中で、漏れる声が止められない。
私はこんなに声が出せられるのかと思うくらい、そしてこんなに感じられるのかと思うくらいだ。

「可愛いな、愛来は。普段も女の子ぽくて、男から見たら守りたくなるくらいなのに、感じる姿はもっと可愛い」

「恥ずかしいよ•••、そんな事を言うなんて」

敦哉さんは、私の事をそんな風に見てくれていたのだ。
それが、告白をOKしてくれた理由なのか。
そうだとしたら、とても嬉しい。
このシチュエーションと、敦哉さんの言葉に気持ちはどんどん加速する。
そして、体はますます熱くなってきた。

「本当に可愛いよ。もっと見せて、愛来の感じてる顔を」

そう言って敦哉さんも服を脱ぐ。
その手がベルトに掛かった時、これ以上にないくらいの緊張が襲った。
そして、きしむベッドの上で私たちは体を重ね合ったのだった。
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