恋人を振り向かせる方法


静かな部屋に、キスの音だけが響く。
いやらしいくらいの息遣いと共に、敦哉さんは私をベッドの上へ横たわらせた。

「これ以上、止められない。でも、それは愛来が悪いんだからな」

敦哉さんは乱暴に服を脱がせると、体中にキスをする。
絡み合う体に、重なり合うキスに、甘い声がだんだん大きくなってきた。

「もっと聞かせて、愛来の声。俺の一番好きな声は、愛来の感じてる時の声だから」

「敦哉さん•••」

止められない、感じずにはいられない。
敦哉さんと体を重ね合う時間を、待ち望んでいる自分がいる事に気付いた。
ありったけの想いを込めて、私は敦哉さんの下で声を上げ続ける。
それに反応するように、敦哉さんの私を抱く力が強くなり、それがますます私を感じさせたのだった。
そして、いくらか時間が過ぎた頃、ようやく夢から覚めてきて、起き上がった。

「何だよ、愛来。もう起きるのか?もうちょっと、ここへいろよ」

ベッドで横になったまま、敦哉さんは私の腕を引っ張った。
その弾みで敦哉さんの胸に倒れ込む。
温かくて大きな胸は、私の安らぎの場所だ。
抵抗する事なく顔を埋めた私を、敦哉さんは優しく抱きしめた。

「いいだろ?もうちょっと、ここにいろって。一人じゃ寂しいじゃん」

時折見せる子供ぽい行動も、私の敦哉さんへの愛おしさを増すものになる。
それを感じると、ちょっとだけ意地悪をしてみたくなった。

「ねえ、敦哉さん。敦哉さんて、私の喘ぎ声が好きなの?」

「えっ!?」

「だって、さっき言ってたじゃない。感じてる時の声が一番好きだって」

焦っている姿も意外な一面で楽しい。
こうなると、ますます意地悪をしてみたくなる。

「そっかぁ。敦哉さんは、所詮、私とセックスしている時が一番好きって事なのね」

からかうつもりで言ってみただけなのに、敦哉さんは不快そうな表情をした。
口をへの字にして私を睨んでいる。

「そういう風に思わせてるのは俺なんだろうけど、そんなつもりはない。何度も言ったろ?愛来を可愛いと思うから、したいんだって」

その後も、「元々悪いのは俺だけど」などと、ブツブツ呟いている。
まさか、本気で怒るとは思っていなく、すっかり焦ってしまった。

「敦哉さん•••?」

おずおず声をかけると、敦哉さんは勢い良く起き上がり、シャツを羽織るとベッドを降りた。

「敦哉さーん?」

大股で冷蔵庫に向かい、ミネラルウォーターを取り出し飲んでいる。
その背中に何度か呼びかけてみるも、完全に無視をされてしまった。
まさか、本気で怒らせたのか。
慌てて服を着ると、敦哉さんの元へ駆け寄った。

「敦哉さん、怒った?」

回り込んで顔を見上げると、ペットボトルを置いた敦哉さんが、突然私の両脇を抱え上げたのだった。

「あ、敦哉さん!?」

驚きで目を丸くする私に、敦哉さんは見上げながらニヤリと笑ったのだった。

「ったく、憎まれ口だけはシッカリしてるよな」
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