恋人を振り向かせる方法


呆気に取られている私に、敦哉さんはルームウエアに着替え終えたと同時に近付いて来た。
そして、優しく手を握ったのだった。

「愛来の事は、最初から好感を持ってた。今にして思えば、確実に好きだったんだと思う。だから、告白された時はラッキーだと思ったよ」

「ラッキー!?」

ラーメンに任せて告白したのは私だけれど、そんな簡単に受け止められていたとは、改めてショックだ。
声を上げた私に、敦哉さんは苦笑いをした。

「ごめん、ごめん。それに、奈子との結婚話もどうしようか悩んでたところだったから、ますますラッキーだったというか」

「もういい!」

全く、何を信用しろというのだろうか。
そもそも、私を利用したと言ったのは敦哉さんの方だ。
告白を受け入れてくれた時には、恋愛感情が無かった事には間違いないはず。
それが、いつの間に•••?
嬉しさよりも、疑念の方が勝っている。
すると、勢いで背を向けた私を敦哉さんは後ろから抱きしめてきたのだった。

「愛来といると楽しいし、癒される。それに、可愛いと思うし会いたいとも思う。これって、立派な恋愛感情だろ?」

「そう言われればそうだけど•••」

「だったら、もっと喜んで欲しいな」

そう言うと、敦哉さんは私の胸に手を伸ばしてきた。
そして、お決まりの様に揉み始めたのだった。

「敦哉さん、何してるの?」

まだ冷静さを失っていない私は、努めて素っ気なく言ってみる。
すると、あっけらかんとした答えが返ってきたのだった。

「何って、胸を揉んでるんだよ。なあ、しようよ、愛来。俺、やりたくなった」

「えっ!?」

ほら、やっぱりこうなる。
最後には、セックスを求められるのだから。
もちろん、それは嫌じゃない。
むしろ、嬉しい。
だけど、少し考えてしまうのだ。
敦哉さんが同棲したがったのは、まさかこの為なのかと。

「愛来•••」

唇を重ねて、慣れた手つきで私をベッドへ押し倒す。
いつもなら、もっとゆっくりと、まるで味わう様に抱く敦哉さんが、今日は心なしか急いでいる様に思えた。

「敦哉さん、何かあった?今日は、いつもより急いでる感じ•••」

思い切って聞いてみると、敦哉さんは苦笑いをしたのだった。

「バレた?だって、早く愛来を抱きたかったから。その時思ったんだよな。俺は愛来が好きだから抱きたいって」

そう言って敦哉さんは、再び唇を重ねた。
遠慮なく服を脱がせる敦哉さんに、余裕の無さを感じて嬉しい。
本当に好きだと思ってくれるなら、私も敦哉さんと抱き合う事が、今まで以上に愛おしく感じる。
敦哉さんが望むまま、私も応えていきたい。
今夜は、ベッドのきしむ音が一段と大きく感じられたのだった。
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