恋人を振り向かせる方法
「何これ!?どうして外に出られるの!?」
一階ではないのに、廊下奥の扉から外へ出る事が出来たのだった。
そこは車通りの多い道路が伸びていて、側はビル群になっている。
メインほどではないけれど、賑やかな場所だ。
「すごいだろ?ここは、一階から見れば上の位置にあるんだよ。道路の形状でそうなっているんだ。ここからの方がホテルへ来るには便利な人もいて、玄関が二つあるホテルなんだよ」
「すごい。だからさっき、フロントがあったんだ」
さすが新島グループのホテル。
やることが斬新で感心する。
「さて、ちょっと逃げようか。俺の名前は高弘。あんたは?」
「愛来、須藤愛来•••」
人懐っこい感じは、さすが敦哉さんの従兄弟だ。
顔は海流で性格は敦哉さんなのだから、調子が狂いまくる。
「愛来か。その指輪、敦哉から貰ったの?」
「えっ!?あ、うん」
思わず左手薬指を隠してしまった。
改めて指摘されると恥ずかしいものだ。
すると、高弘さんは小さく笑ったのだった。
「奈子がその指輪に相当ショックを受けてたよ」
「そう•••」
船上パーティーの日、慌てた様に敦哉さんはこの指輪をくれた。
それはきっと、奈子さんへの当てつけの為に。
当てもなく、高弘さんと歩きながら、ふと疑問を口にしたのだった。
「敦哉さんは、奈子さんを好きだったの?」
「好きなんじゃないか?あいつは認めた事はないけどな。だけど奈子は、敦哉が好きなんだ。一途にずっと恋してる」
敦哉さんも奈子さんを好きなのかもしれない、その言葉に動揺する。
それにしても、穏やかな口調で話す高弘さんからは、敦哉さんが嫌うほどの理由が見当たらない。
二人には、一体何があったのだろうか。
「どうして、敦哉さんが奈子さんを好きだと思うの?」
声が震えている事が自分でも分かる。
すると、それを察した様に高弘さんはタイミング良くあったカフェに、私を誘導したのだった。
「ゆっくり話すよ。その内には敦哉が探しに来るはずだ」
店内は落ち着いた雰囲気になっていて、高弘さんは一番奥の席を取った。
そして席へ座った早々に、話を続けたのだった。
「俺と敦哉は、小さい頃は本当の兄弟みたいに仲良かったんだ」
「えっ!?でも、敦哉さんからは、二人は仲が悪かったって聞いてるのに」
すると、高弘さんは声を上げて笑った。
「よほど俺を恨んでるんだな。でも、仲が良かったのは本当だよ。小さい頃は、敦哉を兄貴みたいに慕ってたし」
懐かしそうに、高弘さんは遠くを見つめた。
「だけど、母さんが俺を新島グループの跡取りにしたがり始めたのと、奈子を女として意識し始めたのをきっかけに、仲が悪くなっていったんだ」