恋人を振り向かせる方法


「海流!?」

約三年ぶりの海流は、少し大人ぽくなっている。
学生の頃は短く切られていた髪が少し伸びていて、流れる様なスタイリングが色気を増していた。
派手でも地味でもないルックスは、万人受けするものだと改めて感じる。
そして、付き合っていた頃は見る機会のなかったスーツ姿に、立派なビジネスパーソンになったのだと印象付けさせられた。

「高弘から聞いたんだよ。愛来、何だか大変なんだろ?」

「えっ!?高弘さんから?やっぱり、二人は従兄弟だったの?」

頷く海流に、半分分かっていたとはいえ驚きは半端ない。

「だけど、付き合っていた頃は、そんな従兄弟がいるなんて、全然言ってなかったじゃない」

すると、海流はわざとらしく視線を宙に泳がせた。

「あの頃、もし高弘の話をしてたら、愛来は絶対に会いたがったろ?」

「えー?そんな事ないよ」

「あるって。お前、かなりミーハーだったもん」

海流は意地悪く、私のおでこを指で突ついた。
この仕草は時々、やられていたものだ。
一気に付き合っていた頃を思い出し、懐かしくなってくる。

「ミーハーだったかな、私」

おでこに手をやりながら、照れ臭い気持ちで海流を見つめた。

「ああ、ミーハーだったよ。だから、高弘の話はしなかった。年上だし、何せ母親は新島グループの血縁者だしなぁ。愛来が興味を持ちそうな男なんて、全員シャットアウトしたいくらいだったから」

「海流•••」

今さら、どう反応していいか分からない。
言葉が続かない私に、海流は穏やかに話しかけてきたのだった。

「彼氏が一緒なら、声をかけられなかったところだけど、良かった一人で。愛来が心配で、居ても立っても居られなかったよ」

「私が心配で?それにしても、よく会社が分かったね」

「ああ、高弘から何もかも聞いてるから。愛来が利用されてるって知って、放ってはおけないな」

「えっ!?」

なぜ、そんな事まで知っているのだろうと疑問が湧き、すぐに解決した。
そういえば、高弘さんと話をした時に、うっかり口を滑らせていたのだった。
それにしても、高弘さんがそれを海流に話したのは、確信犯な感じがする。
きっと、私と敦哉さんの仲をこじらせたいに違いない。
そう考えると、高弘さんへの怒りも少しずつ沸いてくる。
頭の中で悶々とし始めた時、海流が口を開いたのだった。

「三年も経って、また愛来との接点が出来たのは、偶然なんかじゃないと思ってる。俺はまだ、あの頃と同じで愛来が好きだ」

真っ直ぐに見つめる海流の目に、吸い込まれそうだ。
奈子さんとの関係で生まれた敦哉さんへ対する心のモヤのせいで、私の弱い心は傾きそうになる。
海流の目は、あの頃と全く変わらないから。
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