恋人を振り向かせる方法
「愛来、どこへ行っていたんだ?」
急いでアパートへ戻ると、敦哉さんが仁王立ちをして待っていた。
「ごめん。ちょっと寄り道しちゃった。凄く久しぶりに友達に会ったから」
引きつらないで笑顔を作れているだろうか。
さすがに本当の事は言えず誤魔化してみたけれど、敦哉さんの顔は半信半疑だ。
「友達って、男か?」
「女よ!変な事を言わないで」
思わず叫んでしまって、激しく後悔する。
これでは、後ろめたいですと言っている様なものだ。
とにかく誤魔化し切ろうと、敦哉さんの側をすり抜けて部屋へ奥へ入ろうとした時、後ろから抱きしめられたのだった。
「敦哉さんてば、ちょっと待って」
あまりにも、いきなり過ぎて心の準備が出来ていない。
動揺する私の体を、敦哉さんは思い切り抱きしめた。
「待たないよ。愛来は好きなはずだろ?こうやって、後ろから抱きしめられる方が」
「えっ?私、そんな事を言った覚えはない•••」
と、言葉の途中で敦哉さんの手が胸に伸びる。
鷲掴みにされ、その手が動く度に私の口からは甘い声が漏れた。
「愛来は、後ろからやる方が感じるんだよ」
「そ、そうかな•••?」
もうダメだ。
これ以上、理性を保つなんて出来ない。
振り向きざまに唇を重ねると、敦哉さんにベッドへ押し倒された。
海流に言われた言葉が、気にならないわけではない。
どうして、海流にはあんなに嫉妬心でいっぱいだったのに、敦哉さんには平気なのだろう。
いや、違う。
平気ではない。
奈子さんとの関係を知って、すごく嫉妬をした。
だけど、海流の時ほど思い詰めないのは、きっと敦哉さんと一緒の時間が長いからだ。
ほとんど一日中顔を合わせ、毎夜の様にセックスをするのだから、満たされる気持ちも多いはず。
「ほら、愛来。感じてるじゃん。後ろから抱きしめられるの好きだろ?」
体中に手を這わせながら、敦哉さんが耳元で囁く。
低くく色気のある声に、感じない訳がない。
遠慮なく声を出しながら、体は完全に敦哉さんを求めていた。
「好き•••。後ろから抱きしめられるのも、何もかも。敦哉さんとなら、何だって気持ちいいの」
つい数十分前までは元カレと居て、胸までときめかせたというのに、私もたいがい現金だ。
目の前の甘い誘惑に負けるのだから。
だけど、敦哉さんを好きな気持ちも嘘ではない。
海流と再会をして懐かしい気持ちはあるけれど、やっぱり敦哉さんを好きだと思うのだった。