俺と君の現実論
大好きな匂いに包まれ、温かいものに優しく抱きしめられる感触がした。
俺は、これを、知っている。
「え…?はる…」
「なに、泣いてんですか。転びでもしましたか?まったく…、転んだくらいでピーピーギャーギャー言わないでくださいよ」
ぽん、ぽん、と優しく俺の背中を叩いてくる彼女に、どうしてここにいるのかと尋ねれば。
「あなたが逃げたからでしょう」
…ああ、見てたんだ。
情けないなとは思いつつも、つい口を尖らせてしまう。
「…なんで、追いかけてきたのさ。あの害虫たちと、一緒に喋ってたじゃん」
ほんと、素直じゃないなあ、俺。
ハルキも呆れたのか、目を丸くして大きく大きく溜め息をついた。