愛してるの定義(ヒカリの直後)
奈々子は結城の顔を見下ろす。
彼は満足しているように、笑みを浮かべていた。
「簡単に言わないでって、言ったのに。なんで……そんな……」
奈々子は階段から降りて、道を大股で歩き出した。
腹が立って仕方がない。
彼が追いかけてくる気配がする。
わたしは足を速めた。
「待ってよ」
「嫌です」
「『愛してない』って言ってほしいわけ?」
「違います。分かってるでしょ?」
「ちゃんと考えたよ。簡単に答えを出してない」
「ものの三十秒ぐらいでしたけど」
「長い時間考えれば正解が出るとは限らないよ」
「それはそうですけど……でもそれにしたって早すぎです」
「おかしいよ。『愛してる』って言われて、そんなに怒るなんて」
奈々子は立ち止まる。
振り向いて、彼の勝ち誇ったような顔を睨みつけた。
「引き止めるために、口からでまかせを言ったようにしか見えません!」