愛してるの定義(ヒカリの直後)
結城は奈々子の腕をとり、引き寄せた。
目の前に結城の顔がある。
奈々子は身構えた。
「愛してるよ」
「拓海さんを愛してるって言いました」
「『愛してる』って言葉は一つだけだけど、感情は複雑なんだ。じゃあ奈々子さんは、お父さんやお母さんを愛してないの?」
「愛してますよ」
「ほら、愛してるって。じゃあ、僕のことは?」
「……わかりません」
「またでた」
結城が呆れたような顔を見せる。
「自分だけ、何も言わないんだもん」
「……」
「拓海のことを愛してるけど、奈々子さんのことも愛してる。この『愛してる』は、意味が違う」
「さっき、わかんないって」
「わかんなかったよ。だから考えた。それで、この感情を『愛してる』ってことだと、自分で決めた」
「勝手すぎます」
奈々子は結城の手を振りほどき、再び歩き出した。