泪
「水谷、なに?」
授業終了後、昴は彼に話しかけた。
「なに、って…主語がなくて意味わかんねぇって」
昔から口数が少ないとか散々言われてきたから、自分の語彙能力が低いのは自覚してる。
けれど彼と結海はそれを笑って享受してくれた。
「別にただ視界に入ったから見てただけで、特に深い意味はないさ。
それよりさ昴、今日なんの用事もないか?」
水谷は一瞬、表情に影を落とした。
それに気づかず、昴は頷く。
「……まぁ、レポートも終わったし、特には」
ただ、今から放課後までなんの用事も頼まれなければ。
暗にそれを示すと、水谷は「そっか」と満足そうにうなずいた。
「じゃ今日絶対来いよ。久々にワクワクさせてやる」
「ああ、うん」
また変で面倒なことを考えたのだろう。
彼は結海と結託して昴によくイタズラを仕掛けていたのだ。
水谷は、さっき教卓で指導をしていた仙石教授に呼ばれ「じゃ、」と手を振って行った。
昴は手持ちぶたになり、息抜きをするため廊下に出た。
「昴」