こういう精神が不安定なときに限って、彼女の幻を見る。



「…………あれ、」

昴は首を捻った。

廊下を歩いて数分ほどたつのに、一回も結海の幻を見てないし声も聞こえない。

思わず耳に手を当てるが雨音は確かに聞こえてくる。



おかしい。

結海の幻が見えないことがおかしいんじゃない。

彼女の姿を見失ったことに怯えを感じてる自分におかしいと感じた。

あれほど苦しんだのに…。

 
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