泪
ひどく耳慣れた声がして昴は反射的に後ろを振り返った。
けれど背後には、少し古くなった廊下が広がるだけ。
いつもと同じ。
これは彼がまだ、彼女にすがり付いてる証拠だ。
行かないで…って、子供のように泣きすがって。
けど、まだ彼女が生きてるんじゃないかっていう淡い希望を消さずにはいられない。
自分はこんなに女々しい性格だっただろうか。
昔の知り合いには薄情なやつとか言われてた気がするけど。
たぶん、それくらいに彼にとって彼女の存在は大きかったのだろう。
もう、彼女はどこにもいないのに。