その時だった。


船幽霊が体(と言っても腕だけ)を反らしたかと思うと、器用にひしゃくの中の水をかけてきたのだ。

「!」

ぴしゃりと少量の水が昴の腕の服を濡らす。

昴は一瞬身を強張らさせたが、ただの海水であることを確認すると安堵の息をついた。

その後、船幽霊はビシャビシャとひしゃくで辺りの廊下に水をかけ、フッと消えていった。

あとには水浸しになった廊下だけ。


亜紀子は体の震えが収まってから、おそるおそる昴に問いかける。

 
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