泪
「今の……船幽霊、ですよね。腕だけの」
「そうだね…おかげで袖がびちょびちょだよ」
昴は濡れた腕を軽く振って袖を肘までまくり上げる。
湿った感覚が気持ち悪かった。
「水谷を探そうか。言い出しっぺに文句を言いにいこう」
「滝さんは…?」
「想汰さんは一人でも平気だよ。むしろ一人の方が安全だ。あの人はね」
想汰に対する信頼から無意識に出た言葉だったが、亜紀子はどこか羨ましそうにしていた。
「行こう…。どこか浸水してるかもしれないから」