泪
「………何がですか滝さん」
想汰は入り口付近の壁に寄りかかり、腕を組んだ。
くいっと眼鏡をかけ直し、真っ直ぐな目で水谷を見据える。
「雪村から最初に聞いたときから、おかしいとは思ってたんだ。
浸水は船にとって一気に信頼を失う致命的な弱点だ。
危機感を持ってるなら、お前らみたいな素人に頼まず専門家に頼むべきだろう。
違うか?」
「…………」
水谷は想汰に背を向けたまま何も答えない。
その様子に違和感を覚えながらも、想汰は続ける。
「なぜお前らに頼んだのか。答えは簡単だ」