泪
◆side雪村昴
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オレは薄情な人間だ。
その言葉は、オレが自分自身につけた自己評価ではなく、オレの父親から言われた言葉だ。
当時中学生だったオレはその突然の言葉に少々腑に落ちなかったが、高校三年の冬オレはその言葉の意味を理解した。
その年、父が死んだ。
いつも通り家に帰ると、玄関近くに父が倒れていた。
突然死だった。
オレは父子家庭だったから、父親がいなくなれば必然的にオレは天涯孤独となる。
なのに、これから独りになるのに父親が死んだのにオレは葬儀で泣かなかった。
心のどこを探しても、悲しいなんて気持ちがどこにも見つからなかったのだ。
それで理解した。
確かにオレは薄情な人間だと。
人として何か欠けてる、欠陥人間なんだと。
それを自覚しても、改めようとしなかったし改める術も知らなかった。
ただ時間だけが無情に過ぎていく。