泪
「あなたがあの雪村昴君?」
テラスで久しぶりにのんびりしていたとき、背後からの声にオレは振り向いた。
後ろには、清潔そうな白いセーターと紺色のロングスカートを着た女性がいた。
横髪が長く後ろ髪が短い少し珍しい髪型をしている。
「有名かどうかは知らないけど…そうだよ」
「そうなの?あなた有名よ。美人で頭もよくてクールな一年生って言われてるわ」
「……本人の前で本人の噂するようなやつ、いないと思うよ」
「それもそうね」
彼女はにこりと笑ってオレを見上げてきた。
「私は神崎結海。生物学科の二年生よ」
オレより身長は低いが、どこか大人びた雰囲気を持っていたのはそのためか。
立ったままの彼女をそのままにしとくのは忍びないと思い、オレは「席、空いてるよ」と座ることをすすめた。
しかし彼女は横に首を振る
「結構よ。長話するつもりはないから」
「そう……」