泪
なら何しに来たのだろう。
「ねぇ雪村君。私はあなたが嫌いよ」
「…………はあ」
わずか15㎝の距離で「嫌い」と言われたのはさすがにはじめてで、驚いて目を丸くする。
そしてさらに疑問が生まれた。
嫌いならばなぜ話しかけてきたのだろう。
「あなたはとても薄情な人ね。
今日だって、たくさんの女の子達があなたの気を引こうと頑張っていたのに…あなたはそれをまるでテレビの中の映像を見るみたいにして。
ねぇ…それであなたは満足なの?」
「…………、」
とっさに返事をできなかったのは、彼女の言葉が理解できなかったのと。
彼女の言葉に、確かに心が抉られた気がしたからだ。
自分は他人にたいして興味なんてなかったし、自分に近寄ろうとしてくる女性たちも特に気にしてなかった。
相手しなければそのうち飽きるだろうと。
今の現状に、満足してるかとまったく満足なんてしてない。
そもそもできるはずがない。
今まで心が満たされるほどの出来事なんて、まったくなかったのだから。