泪
何か言い返そうとするも、なんと言えばいいのかわからない。
こういうときに他人とのコミュニケーションを絶ってきたことが悔やまれる。
オレが言葉に悩んでいると、神崎さんは少し言い過ぎたかと困ったように眉を下げて。
「ごめんなさい。初対面なのに、図々しかったわ。
でも、どうしても放っとけなかったの」
「ぇ…」
神崎さんは申し訳なさそうに笑って、「それじゃ」と立ち去ろうとする。
行かないでほしい。
はじめて、生まれてはじめて他人にそう思った。
オレは、思わず立ち上がって神崎さんの腕をつかんだ。
神崎さんは驚いた表情で目を見開いてる。
「おーい結海、なにしてんだ?」
遠くから顔は知ってるけど名前は知らない生徒が彼女を呼んでいる。
人を待たせてるなら、放すべきだろうか。
ためらいがちに腕をつかむ力を緩める。