少しだけいつもの彼に戻ってきた気がして、昴は体の力を解いた。

しかし。


「けどな昴。俺はまだ、一番伝えたいことをお前に伝えてない」

「えっ?」

水谷は酷薄とした笑みを貼り付け、手すりから手を離す。


「水谷ッ!」

傾いた斜面で、体を支えるものがなくなった水谷は重力に従い海に落ちていく。

昴はとっさに叫び、水谷の片腕をつかんだ。

 
< 164 / 255 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop