『……なぜここにいるの?あなたは戻るべきよ』


その言葉に、昴は愕然と目を見開く。

縋るように結海の服を掴んだ。

「いやだ…!結海と一緒にいたいって、言ったじゃないか!君は…許してくれた…」

『昴』


ふんわりと結海の腕が昴の背中を包み込む。
子供を慰める母親のように。

『確かに言ったわ。あの言葉が、今のあなたを縛り付けているなら、ごめんなさい。でも、あなたもわかるでしょう。
私は死んだの』


「………オレも…本当はオレも、あの時君と一緒に沈みたかった。
謝らないでよ…それはオレの方だ。
水谷がオレに死ねばいいって言ったとき、心の底からまったくその通りだと思った。
君の代わりに、オレが死ねばいいんだッ」


ポロポロと昴の目から泪が落ちる。
落ちた泪は海に融けて消えていった。

 
< 207 / 255 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop