昴は顔をあげ、久しぶりに見る結海と目を合わせる。

彼は気づいてなかった。
自分の体が、ちゃくちゃくと死に向かっていることに。


「君と一緒にいたいんだ…。オレは君にいろんなものをもらった。けどオレはまだ…君になにも恩返ししてない!」


『いいえ昴。あなたは私に、人を好きになるという感情を教えてくれた。
それだけで、もう私は充分よ?』

「え?……」

昴がぽかんと聞き返すと、結海は微笑む。
それは今まで見たことないような、儚げな笑みだった。

 
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