泪
「俺がさっき言った話、」
トレイをテーブルの上において椅子に座ろうとしたとき、想汰が不意に口を開いた。
「幽霊は信じない?」
「ああ。そんなもの気の弱い人間が見る錯覚だ」
椅子に座って理解できないと首をかしげると、想汰はゾッとするような底冷えするような口調で言った。
「だからな雪村。お前が見てる夢も幻も、ただの虚飾だ」
「…………」
いつかそういわれる覚悟はしていたが、いざ言われるとショックを受けた。
「受け入れろよ。神崎は死んだんだ」
「……でも、遺体はまだ、見つからないし」
「もし仮に生きていても、危険な大海原で二ヶ月間人間が生きていけるか?
生態学を中心分野にしてるお前なら、理解できるだろ」
昴は何も言い返せなかった。
顔がひきつるのをこらえるのに、かなりの精神力を使った。
落ち着けと必死に自分に言い聞かせる。