泪
想汰は矢継ぎ早に切り捨て、注がれた冷めた麦茶をグビグビと飲み干し、トレイをもって席から立った。
「あ、」
待って、という声はどこからか聞こえたピピピという電子音にかき消された。
もう想汰の姿は食堂にない。
昴はテーブルに視線を戻し、もう一度麦茶を注いだ。
ズズ…とゆっくり湯気がたつ麦茶を飲みながらさっきの想汰の言葉を思い出す。
『神崎に頼まれたんだよ。お前の面倒を見てくれってな』
「…結海が、」
オレに。
昴は嬉しさやら恥ずかしさやらと、複雑な感情が込み上げてきて顔を片手で覆った。
頬の熱が冷めるのを確認し、昴はさっきまで想汰がいた席を見て小さく呟いた。
「……コップ、忘れてる」