泪
俺が雪村昴という人物に有ったのは、まったくの偶然だった。
雪村昴の噂は他の教授たちからかえがね聞いていた。
『美人で頭もよく、まさに秀才の生徒が生物科にいる』
その美人で頭のいい雪村昴を自分の科に入らせた仙石教授はまるで我が子のように彼の自慢をしている。
嫌でも耳に入った。
そこまでチヤホヤされてるんだから、そいつも甘ったれたやつだろうと少しうんざりした。
そんなある日。
図書室に資料を取りに行った時だった。
「雪村君はすごいのね。じゃ、この問題も解けるかしら」
「…や…自分で……た方が…」
図書室の奥から、二つの声が聞こえた。
ひとつはハキハキとした女子の声。
もうひとつはボソボソとした男子の声。
おおかた課題のことで話し合ってるのだろう。
特に興味も示さず目的の本を取りに行こうとした。が。