泪
はて。
あの女子生徒は「雪村君」と言わなかったか。
雪村という名字はどちらかというと珍しい方だろう。
この大学にはたくさんの生徒が通っているが、珍しい名字の人間が二人いるのは考えづらい。
俺は興味を引かれ、声の方向を覗いてみた。
「だってわからないんだもの!雪村君、二年の授業も理解できててすごいわ。
まぁ語彙能力が低いのと、他人に対してとっても鈍いのがたまに傷ね」
「はあ…」
机には、とある男女が教材を開いて座っていた。
女子の方は活発そうな短髪に水色のタールネックのワンピースを着ていた。
第一印象でも明るく活発な性格が見てとれる。
男子の方は男にしては長い黒髪を持ち、やけに整った顔をしていた。
確かにクールで無口そうだ。
彼が雪村昴だろうか。