泪
想像してたのとまったく違い、俺は虚をつかれた。
すると、不覚にもトンと肩が半分以上出ていた本にあたり本が落ちた。
二人が驚いてこちらを向く。
俺は思わず舌打ちした。
「あれ、確か…心理学の滝教授でしたよね。調べものですか?」
「助教授だよ」
女子の言葉を雪村昴がやんわりと訂正する。
「知ってるのか。雪村昴」
「…………」
名前を呼ばれたことに彼は目を丸くし、「どうして知ってるのか」とでも言いたげに首をかしげた。
「噂よきっと。雪村君は有名人だからね」
「…………」
雪村は不本意だ、とでも言うように目をすがめた。
無口というか…。
目は口ほどに物を言うを具現化したようなやつだ。