泪
「…噂って…あの失礼なやつですか。人のことを美人だの秀才だの…」
「あら?雪村君は美人よ」
「神崎さん…」
雪村は面倒そうに息をはいた。
どうやら彼は、神崎という少女に何回も美人美人と言われ続けているらしい。
「…それで、あなたは?」
雪村は俺に問いかけてきた。
主語がないから意味わからないが、「なぜここにいるのか」と聞いてるのだろう。
「…俺は資料を探しにきた。昨年の生徒名簿だ」
「ああ…」
すると雪村は立ち上がりどこかに行った。
俺と神崎は首をかしげながら彼が戻るのを待ってると、彼は白いファイルをもって戻ってきた。
はい、とそれを俺に渡す。
受けとるとそれは、まさに俺が探していた昨年度の卒業生のファイルだった。
「…違う?」
怪訝な顔をしてたのがバレたのか、雪村が不安げに眉を寄せる。
「いや、ありがとう助かる」
「そう」
言葉は少ないが、表情は少しばかり和らいでいた。
ホッとしているようだ。