泪
第3章・海に還る
船・出発前兆
一週間の船旅当日。
港に停まる一隻の船の前に、数人の男女が集まっていた。
皆参加希望を出したオカルト研究会のメンバーである。
にぎやかに騒ぐ面々から少し離れた所に、昴は一人でポツンと立っていた。
もともと水谷以外とあまり接しない彼が一人でいるのはメンバーにとって見慣れた光景であった。
そもそも彼はこの船旅にあまり気乗りしないのだ。
はしゃぐ気にはなれないだろう。
「よう雪村」
声が聞こえた方向に顔を向けると、比較的少ない荷物を提げた想汰がいた。
メンバーでない彼がいることに、他の会員は指摘していいのか戸惑っている。
「...やっぱり来たんだ」
呆れ気味にそう言うと想汰は「まぁな」と小さく頷いた。