泪
思わず手すりから乗り出しだ時。
「…雪村さん」
背後から、聞き覚えのある声がした。
また結海の幻かと一瞬思ったが、それにしては声が幼い。
振り向くと、茶色の髪を後頭部にまとめてた亜希子がいた。
目を丸くすると、亜希子は恥ずかしそうに俯く。
「あの、下ろしたままじゃ邪魔だから、結ってみました。……似合いますか?」
「うん。そっちの方がいいかな」
本心からそう言うと、亜希子は照れたように頬を赤くさせた。
「水谷と一緒じゃないの?」
「あ、えっと……雪村さんがいないことに気づいて、私もこっそり抜け出してきちゃいました」
「ああ…。心配させたかな。ごめん」
「いえ!私が自分からしたことですから」
彼女がせわしなく動くたび後ろの髪が本当に馬の尻尾のように左右に揺れる。