「用件はそれだけですか?なら連れを離してください。死にそうです」

宮野は渋々昴を離した。
昴はふらふらと捕まれた左肩をおさえ、死にそうな顔で壁に寄りかかる。

「…船で不審な行動は控えるように。
夕食バイキングはもうすぐだ。そろそろ夜も更ける、おとなしく部屋に帰りなさい」

「ご忠告、誠に感謝いたします」

想汰は棒読みで頭を下げ、その場を去る。

最後まで疑わしげな宮野の視線が亜希子には痛かったが、昴と想汰は振り向くことなく歩を進めた(昴の場合は痛みでそれどころではなかった)。

  
< 72 / 255 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop