泪
誰かに助けを求めようと視線を泳がすが、水谷はスパゲティに夢中で想汰は飽きて本を読んでいる。
すると、亜希子が心配そうにこちらを見ていた。
昴は安堵して、詰め寄ってくる女性客の間をぬって彼女のもとへ向かう。
「安部さん。ちょっと、付き合って」
「え?は…はい」
昴は亜希子の手をつかんで女性客に「すみません…連れがいるので」と頬をひきつらせながら微笑んで見せた。
残念そうに頷き、彼女たちは散らばっていく。
昴は心の底から安堵した。
「ごめんね、安部さん。風寄せに使ってしまって…迷惑だったよね」
「あ、あああ…いえ、だ…だいじょうぶです…ですから…その」
手を……と亜希子は沸騰したやかんのように顔を真っ赤にさせた。