ようやく落ち着いたらしい亜希子が聞いてくる。
昴は微笑んで「なんでもない」と答えた。

「じゃあ…オレはそろそろ部屋に戻るよ」

「えっ。でも雪村さん…何も食べてないんじゃ…」

「そうだね。でも…大丈夫だよ」

「い、いえ!大丈夫なわけありません!」


滅多に聞けない亜希子の大声に、昴は驚いて固まった。
近くにいたツアー客も、突然の声に驚いたようだ。

だがとなりに昴がいることに気づき、痴話喧嘩だろうとすぐに気にとめず去っていく。

「私、滝さんから聞いてるんです。雪村さんはたまに一日一食の生活送ってるって…。今日は、こんなにごちそうが並んでるのに……。
お願いですから…少しでも食べてくさい。雪村さん細いし小さいし…そんなんじゃいつか倒れますっ」

 
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