「改めて言うが、俺の専門は生物学だ。人間はどこまでが限界で、その基準はなんなのか。つまり人間の始まりと終わりについて。
そこで未だに不明な点が多い脳についての研究を進める。

まずは海馬についてだ。
さっきも言ったが、情報をためすぎると脳が膨大な情報量に圧迫され機能を停止する。
海馬はそうしないために、忘れると言う機能を使うんだ。
だが、産まれたその時から海馬が機能してる訳じゃない。
子供の頃の記憶を持ってるやつなんてほとんどいないだろう?
それは脳の海馬がまだ未完成で、まだ発達してないからだ。
先人の研究によると、脳の海馬が正常に働くのは2~3歳から。
しかし、感情は働く。
嬉しい悲しい痛い楽しいといったようにな」

授業の後半になるにつれ、あくびをしたりする生徒が増えてきた。
けれど彼は気にせず続ける。

「デジャヴって知ってるか。日本語で既視感。実際見たことないのにまるで以前にも目撃したと錯覚する現象だ。
だいたいは夢で見たその光景を、現実だと思い込むケースが多い。正夢とも言う」

 
< 8 / 255 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop