泪
チラリと時計を見る。
授業の終わりまであと10分程度だった。
「そもそも夢とは、簡単に言えばその日起こった出来事を脳が整理するために起こる現象だ。記憶の整理とも言う。
特に、何度も同じ夢を見たりするのはその夢の内容に本人の強い思い入れがあると言うことになる。
例えばコンプレックスや強い願いや想い。よく自分以外の他人の夢を見るのは、その人物に何か特別な、強い感情を抱いてるから。とも言える」
ピタッと昴のペンを持つ指が止まった。
何度も見る夢。
何度も出てくる人物。
「しかし所詮は夢だ。
けれど、同じ夢、場所、人物が出ると、それは何かの暗示かもしれないな」
ふいに視線を感じ顔をあげると、昴の席から通路を挟んだ席のななめ右上の人物が、彼を見ていた。
ただたまたま教卓を見る方向に昴がいるだけかも知れない。
その人物が他人なら特に気にしないが、知り合いだからやけに気にしてしまう。
「………水谷…?」
その時、授業の終わりを知らせるチャイムが教室に鳴り響いた。
どっと一気に他の生徒たちの緊張が緩むのを感じた。
「じゃ今日はここまで。今週のレポート終わってないやつはさっさとやっとけよー」