泪
「神崎が死んだ。ならお前にもチャンスがあるんじゃないか」
「チャンス…ですか?」
首をかしげると、滝さんはどこか遠くをみながら淡々と言った。
「恋のライバル…ってやつがいなくなって、いい機会だろ。今なら傷ついたらあいつを落とすくらい、」
「そんな最低なこと、しません」
きっぱり言い切ると、滝さんははじめて私を正面から見る。
「なるほどな…。お前、いいやつだな」
「どういう意味ですか?」
「深い意味はない」
そう言って、彼はポケットに手を突っ込んだまま「じゃあな」と手を振って階段を上っていった。