Doll

「君は甘いものがすきなのか?」

いつもの服屋の前、
夢中でクレープを頬張るハニーを見て、ぼくは問いかけた。

「ちがうわ。生クリームがすきなの。でも...」


食べかけのクレープを、ぼくによこして“もう飽きたわ”だと。

クレープを見ると生クリームの部分だけかなり減っている。なるほど。本当に生クリームがすきなんだな。


ぼくは食べかけのクレープを一気に口に放り込むと、あいた手で自販機の珈琲を買った。

ハニーに初めて出逢ってから、3週間が経つが
相変わらずぼくらはこうやって午前2時30分に待ち合わせては他愛もない話をしている。前と変わったことといえば、週末になったらハニーがぼくの家に泊まりに来るようになったことだ。


「…太陽が、昇ってきたわ。」

「…あ。」


気がつけば もう朝方。


「じゃあ、またねハニー。」


ぼくはいつもハニーと別れたあと、一眠りしてから働いている工場へと向かうので、一旦家に帰った。


―――…あ、圭からメールが入ってる。



件名:タイトルなし
From:杉谷 圭
――――――――――
元気か?最近急に連絡が減ったから心配だ。お前一人暮らしなんだから、なんかあったらおれを呼べよ。じゃあまた、連絡するわ。

        END



そういえば アイと逢ってから全然連絡とってなかったな。
あとで電話でも、掛けよう。


―――――その時だった。


実に不快な着信音が部屋中に響き渡った。

―この着信音は…





母。





なにか 物凄く いやな予感がした。
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